cyokicyanのブログ

詩を書いて誰かに読んでもらいたい。
下手でも面白くなくても誰も気づかなくても
自分には心があります

缶コーヒー(小説)

母さんが泣いてた


ある冬のことだ

とても寒い冬だ

小さなストーブでは窓も曇らないほどの寒い冬

僕は携帯をとり

電話をかけたんだ

僕は母さんに「なぜ僕を産んだの?」

僕は母さんに「僕なんか産まれて来なければよかったのに」


母さんは泣いてたよ

いつもタバコをふかしてデミタスの缶コーヒーを母は飲むのだが、

その日は母さんは静かに泣いてたよ

嗚咽が漏れそうになるのを我慢しながら

鼻をすすると、空になった缶コーヒーに鼻をすする音が響くんだ

次の日に母さんは電話で静かな声でおはようといい、僕は静かにこう言った

「なぜ泣いてたの?」

母さんは、

「ごめんね、ごめんね、ごめんね....」

ただそう言い続けた


僕は今、歳を召した還暦を過ぎた女性の老人に、暖かい缶コーヒーを買ってきて欲しいと頼まれた。

僕は二本デミタスの缶コーヒーを買ってきた。

僕はわからないが二本缶コーヒーを買い、

人肌の温度に緩くした缶コーヒーを空けて

女性にあげた。

僕は外に出てデミタスの缶コーヒーを空けた

コンビニの缶コーヒーは相変わらず熱い

空になった缶コーヒーを持ってタバコをふかしていると、僕は寒くて鼻をすすった

すると缶コーヒーに鼻をすすった音が響いた

僕は急に目が滲んで、涙が止まらなくなった


今年も寒い冬が来たのだ